上海のビジネス情報誌「BizPresso(ビズプレッソ)」の「新語にみる中国ビジネス風景」コーナーで、当中国語学校が4回目の取材協力を行いました。
今回は中国で大人気の歌手「周杰伦」がイメージキャラクターを務める、アパレルメーカー美特斯邦威(Meters bonwe)の広告キャッチコピー「不走寻常路」に関する内容です。
以下「BizPresso」11月21日号の記事より抜粋
【不走寻常路(bu zou xun chang lu)】
普通とは違う独自路線を強調
人々の服装は時の世相を反映するものだ。経済の改革開放により、志向が細分化した様々なものが手に入るようになり、中国の人々はおしゃれをする中でも、他人と違った自分を演出し始めている。そのような意識の変革を表す流行語の一つが、「不走寻常路」。普通の人とは違う私の道を行く、敢えて独自路線をとる、というような意味だ。
中国では人々の服装の変遷を見ていくと、時の思想や世相を大きく反映しており、実に興味深い。旧ソ連と親交の深かった50年代は、中国の人々はソ連式の「苏式服装」、レーニンが着ていたのと同様の「列宁装」を着用した。
これが60年代になると、孫文が着ていたのと同様の「中山装」が広まるなど、当時の思想を服装で表す「制服热」が高まった。また、政府関係者の中には毛沢東に代表される「毛式服装」を着ていたし、その後には、一般の人々にも「人民服」として浸透した。
70年代は文化大革命の関係で軍事化の色彩が濃くなり“十亿人民十亿兵”(10億の人民すべてが10億の兵隊)”と言われる「军便服」で統一されはじめた。その様子は“绿色海洋(まるで緑の海が広がっているかのよう)”と形容された。
この50年代から70年代にかけては飢饉や物資不足などによる苦難の時代が続き、当時の服装はつぎはぎだらけの「“补丁”装」。“新三年、旧三年缝缝补补又三年(新しいのを3年着て、古くなってもそれをまた3年着て、さらにつぎはぎしながらまた3年着る)”なんて言葉も流行している。
70年代後半から改革開放が始まり、ブランド品なども数多く流入。中国の人々はみな一様に自由な服装を楽しみ始めた。それが、いまや人と同じような服装じゃいやだ、という「不走寻常路」の時代に入ったわけだ。
もともと、この「不走寻常路」はアパレルメーカー美特斯邦威の広告で用いられた言葉。人と違ったものの考え方に基づき、自分独自のおしゃれをすることがかっこいい。同社のイメージキャラクターで、今を時めく台湾のスター、周杰伦(JAY)が出演したこともよりクールなイメージを決定づけた。
そしてこの「不走寻常路」という言葉は、単に若者のお洒落に対する考え方の枠を超えて、個人主義のちょっと変わったやり方、会社の独自路線を行くような考え方を表すときにも使われ始めているという。
中国では個人の考え方でも、企業のビジネスの手法でも、普通とは違う独自路線を歩むことが強調されるような時代に入ったことがこの言葉の流行から窺える。
取材協力:王雯妍老師(上海の日本人向け中国語学校・コラボラーニングセンター)